安藤裕子にとって音楽創作とは


『グッド・バイ』が発売されてから早くも2か月が経ちましたが、
未だに毎日1〜2回通しで聴いています。
発売からずっとなので、もう100回以上聴いているのかな。。。

正直前作や前々作の時はここまで聴きこむことはなかった気がするので、
今回のアルバムが個人的には余程ツボだったようです。

私は基本的にはアルバム単位、かつ、収録順の通りでしか
音楽を聴かない(聴けない)人間なので、
そのアルバムを繰り返し聴くかどうかは、
個々の楽曲が好きかどうか以上に
アルバム全体として好きになれるかがとても大きいです。

『グッド・バイ』は、個々の楽曲の完成度も素晴らしいと思いますが、
加えて、収録曲のバランス、そして何より曲順が素晴らしいと思います。
特に最初の4曲の並びが大好きです。


グッド・バイ

グッド・バイ



安藤さんが創作活動への姿勢のようなものを語った
インタビュー記事が公開されていて、
とても興味深く拝見しました。

http://lmaga.jp/article.php?id=2567

上記の話と一見矛盾するようですが、
シングルはぜひ出して欲しいです。
カバー曲を始め、アルバムには入れづらい曲
というのもあるでしょうし、
個人的には、インストゥルメンタルバージョンも
シングルならではの楽しみだと思います。

さて、今回は、
上記のインタビュー記事と対比してみると面白いかなということで、
安藤さんが過去に創作への考え方のようなものを語っているものを
幾つか御紹介したいとおもいます。

今と変わらない部分もあり、
変わっている部分も当然あると思いますが、
私が安藤さんのインタビュー記事などを見ていつも思うのは、
芯の部分が全然ぶれない人だなぁということです。

各発言は、必ずしも年代順に並べていません。
いつ頃の発言か想像しながらお楽しみください(笑)。





(word by 安藤裕子

例えば、「六月十三日、強い雨」は
すごくシンプルで素直だと思うんですけど、
素直でシンプルな方が輝く曲はたくさんありますよね。
ただ、作り手と聴き手の中で、
何がカッコイイ/悪いかの基準はそれぞれあるし、
私の曲のねらいどころに共感してくれる人は
大の音楽好きが多かったりはしますよね。
ただ、時代に流されて、
後で恥ずかしくなるものはやりたくないですね。

私は付き合って2、3ヶ月のカップルについて歌うより、
自分の人生だったり、生き方に目がいってしまうタイプの
人間だと思っているんですけど、だからなのか、
10代の子から60歳、70歳の方まで、
幅広い方からお便りをいただくんです。
私は人として生きる上で何を感じるか、
どんな感情が生まれ出るのかっていうところで、
聴き手の方との接点を持ちたいし、
音楽を通じて前に進むための何かを得たいんですね。
だから、これからも年齢を問わず、
そういうリスナーと音楽を介して出会えたらいいなと思っています。

やっぱり、人にみられるだけで体力ってすごく消耗するし、
神経もすり減るしで。
決して万人にすごい喜ばれることをやっているとは思わないから。
せめて元からずっと好きでいてくれる人の期待には
応えたいなとは思っていて。
うーん。分かんないっすねぇ。
自己満足で終わりたくないって思いながらも、
「好きでもないことはやりたくねぇなぁ」っていうのが一番あって。
人と意見が合う、合わないっていうのは、
時の運じゃないですか。
誰が正解かなんてなくて。
私が「ピンクにしたい」って言っても、
9割の人が「いや青でしょう」って言われても、
青は正解じゃない気がするし。
「ピンク」って言ったら「趣味悪いなあ」って
言われちゃうこともあるだろうし、
好みが合うのも時の運というか。
たまたま今回「のうぜんかつら」が
多くの人に響きやすいカラーを持っていて
いい結果をもらったけど、
「その次その次」って移り変わる私の色味に
全員の人が興味を示すとは思わないから、
聴く人が減ると、周りの人もがっかりするから、
それが一番きついかな。
自分の周りで一緒に頑張ってくれている人たちが
「うれしい」と思ってくれたらうれしいし。
「あ〜あ」ってため息つかれたら
「あ〜そっかぁ」っってこっちも悲しくなっちゃうし。

全部が全部、自分の辛いとか悲しいとか、
そんなこっとばっかり歌ってたら疲れちゃうし、
うざいじゃないですか。
あたしはそれを歌うために作ってない。
ていうか、あたし黙っちゃうから(笑)。
ふつうに生きてたらほんと、
あんまり他人と接しなくなっちゃうから。
そういうあたしが作る音楽なんですよ。

時にはやっぱり心の揺れって、
人生の中ではあるわけじゃないですか。
だから、ちゃんと一枚のCDを聴いてくれた中に、
一個はちゃんと訴えかけるものが絶対必要だと思っていて。

ものを作るということにおいては、
確かに瞬間的な突飛した感情とかが楽なんですよ。
あたしも曲作る勢い的には、そういうもののほうが、
それこそ10分くらいでできちゃったりするんですけど・・・
せっかくお仕事としてこういうことができるようになったから、
長く続けたいんです(笑)。
ほんとに、ごめんなさいね、
打算的にとられるかもしれないんですけれども。

声も、レコーディングしてると、
「重ねちゃう?重ねちゃう?」みたいな(笑)。
「ハモっちゃう?ハモっちゃう?コーラス入れちゃう?」みたいな、
やっぱり自分が主旋律を歌っていると、
それにかんで自分で別のメロディを作るのが好きなんですよ。
人に伝えるときも限定はしたくなくて。
というのは、それを聴いた人が、
「生きてきた人生の中でこういう感情の時があった、
こういう事件があって、こう思った」というところと
感情だけがリンクすれば、私は本望だし、
出来上がったものは私の手元から離れて、
受け取った人の中で生きていくから。

私は特に何かからインスピレーションを受けて
作ったりするタイプではないですね。
その時の気分やキーワードになるものが、
似ていたりはするかもしれませんが、
曲を作るにも、服を選ぶにも考えて物を選ぶことはなく、
その時の勢いが大事だと思っているので。
シンガーソングライターとして曲を作りますが、
私自身と音楽は凄く別のものですね。

基本的に、私は、
人とコミュニケーションをとりたくて
ものを作っていると思うんですよ。
音楽は私が誰かに必要とされる手段で、
詞を作ると人がいてくれる。
それは非常に大事なことで。
誰かと分かち会いたい、誰かと共有して、
自分は一人じゃないっていうことを
確かめたいっていう思いがあるんです。
そういう意味では、私にとっての音楽は、
とても実践的にコミュニケーションがとれる手段なんですよね。

人生の安定とか幸せをすごく欲してるんですけど、
曲を作る上での感覚が冴える感じっていうのは、
生活の乱れにのっかってくるところもあったりして。
感覚的なさえは感じるけど、
ほんとの人生を削って不幸にする事って、
どうもぴんとこない。
あたしは、実生活をきちんと営んで、
その上で生きているものを紡ぎ出すことができれば
一番いいなと思っているし、やっぱり、
作りものを続けていきたいので、
だからこそちゃんと日々生きるようにしたいなと
思ってみたりしますね。

例えば、シンガーソングライターっていう呼び名は
しっくりこないんですよ。
私は詞曲をつくって、歌っているけれども、
実際の音符を彩るのはもっさんだし、
もっと総体的な指示をするのはアンディだし、
3人で作り上げた脚本みたいなものがあって、
さらに出演してくれるミュージシャンがいて。
私はその舞台に、脚本家だけど出演もしているという、
ちょっと目立ちたがり屋なところがあるって感じ。