安藤裕子 『Paxmaveitiラフマベティ-君が僕にくれたもの-』 レビュー&セルフライナー

今回は、『Paxmaveitiラフマベティ-君が僕にくれたもの-』。


Paxmaveiti [ ラフマベティ ] -君が僕にくれたもの-

Paxmaveiti [ ラフマベティ ] -君が僕にくれたもの-



この曲は、単体でも十分名曲だが、やはりゲームと併せてその真価が発揮される。
この曲を聴く度に、ゲームのラストが思い浮かばれて、涙を誘う。




〈セルフライナー(word by 安藤裕子)〉

このゲームのシリーズは元々好きだったので、
お話を頂いた時嬉しくて、脚本を読んで曲を作りました。
ちょっと不穏な匂いがする予兆の中で物語りが始まるゲームなんだけど、
最終的には、アニメ映画を観終わったような、
何か心に得られるゲームで。
今回エンディングのシーンに向かって、
作品の答えみたいなものがでるように、
と考えました。
今までのシリーズより前に戻った話で、
レイトン教授とルーク少年という主要人物の出会いの部分を
エピソード1的に物語っていて、
登場人物も子供が多くて、
その子供たちが出会いや別れを経験して、
また新しいスタートを切る、
というのが描かれているんです。
それを大きな気持ちで見守る側からか、
主人公になりきって力強く生きていく側から描くか、
悩んで。
結局三回目に作り直したのが今の曲なんです。
歌詞の中に、そのストーリーの答えみたいなものを、
散りばめてあります。
でも、ゲームをクリアしないと聴けない
エンディング・ロールのテーマ曲なので、
私もまだエンディング・シーンを観ていないんです。
あとやっぱり、作品の世界観のこだわりがすごくあるので、
その世界を吸収しながらも、自分の音楽でもありたいから、
試行錯誤しましたね。
ベスト盤が出た後、
ご一緒したことのない方とレコーディング作業してたんですけど、
今回は今まで一緒にやっていた山本隆二くんに、
アレンジをお願いして。
だから安藤優子というカラーも色濃く出ているんじゃないかな、
と思います。


あたし自分の曲あんまり作り直したりしないんだけど、
この曲は2、3回作り直してて、
やっぱり突発的に出てくる、
自分のパって出してくるものだけでは、
ゲームの世界を見る人にはちょっと伝わらないかなって思って、
1回目作った時に、で、作り直したら今度、
ちょっとこうゲームの世界に寄りすぎちゃって、
自分が消えちゃった感じがして、
それじゃ名無しのごんべえだなと思って、
安藤優子って人が歌を歌うんだったら、
どっからどう聴いても安藤優子の作品だなってっものになっていながら、
ちゃんとその世界と融合した部分がないと意味ないなと思って、
で、ごちゃまぜにして、3度目に出来上がったのがこの楽曲
タイトルは結構やりとり何回かして、
相手が入れてほしいキーワードはもちろんあるんだけど、
そういうの最初こうちょっとピンとこなくて、
でも結局会ってお話してこういうふうに聞こえるし見えるんだよね、
みたいな話をしたら、
曲の世界がちゃんと成立してくれてたら全然いいですみたいになって、
ゲーム作ってる側の人も、
大人な人っていうよりはすごく純粋にゲーム作りに対してストイックなんですよ。
主役になる人達の実在するイメージを壊したくないっていうか、
お話を聞いていたら、なんかあたしもゲームのファンだったし、
これってやっぱり真面目に作っている人がいるから楽しいんだなって思わされた。

このゲームをシリーズ1から遊んできた身としては、
2つ返事で引き受けさせてもらいました。
あ、私、ゲーマーじゃないですよ!
うちのチーフ・マネージャーといっしょにしてもらっちゃ困ります(笑)。
ごく普通におもしろいゲームがあったらやるくらい。
でも、この曲を書くに当たっては、ゲームの脚本を読んで、
物語にはいっていく中で自分とリンクする気持ちを模索していきつつ、
遊ぶ身としては脚本読みたくなかったなとも思ったり(笑)。
物語の中心には子供たちの存在があって、
その子供たちがマーチング・リズムのイメージとしてあったので、
ガングルっていう足首に巻いて踏みならす鈴を付けて、
アレンジャーとディレクターと私の3人で
スタジオの廊下へ出て録音したんです。
そうやって遊び楽しみながら作った方が
いきいきした音楽になっていくんじゃないかなって思うし、
カップリングのYMO「君に、胸キュン」のカヴァーでも
その3人でコーラスをやってるんだけど、
そうやってわはわは笑いながら作業できたのは
すごくいい音楽の形につながったと思いますね。
毎回手がけているCDジャケットですが、今回は貼り絵。
レイトン教授とルーク、
そして私をイメージして作っていただいたキャラクターの
ネーヤを描いています。
ゲームでは、レイトン教授とルークの出会いが主軸。
そこで、ほかのキャラも含め、
”出会い”と”旅立ち”をテーマに作りました。
登場人物の気持ちになって、
湧き出た感情を込めています。
この曲は、
ネーヤがルークたちの物語をト語り的に歌ったものなんですよ。
ゲームをクリアした人が、
ストーリーとリンクする歌詞でゲームを思い返しながら
ぐっときたところでAメロが入り、
サビで力強く進んでいく・・・というイメージなんです。


レイトンファンとしては、
真相を先に知ってしまうのは誤算ではあったんですけど(笑)、
せっかく好きな世界に入れるので、一生懸命に脚本を読んで、
3回くらい作りなおして。
今回は子供達の心の成長や交流、離別や旅立ちが描かれているので、
Aメロは彼らを見送るような母親の気持ちで優しく歌っていて、
サビで少年達の心が混じるような感じになってるんです。
歌詞は一見、ゲームとは関係ないように見えるんですけど、
いろんな部分にストーリーのキーワードや景色を入れているので、
ゲームのエンディングを迎えた後に読んでもらうと、
ここを歌ってるんだなってことがわかって面白いんじゃないかと思いますね。
(ロシア語のようなタイトルは彼女が作った造語だという)
子供達が中心に描かれている作品なので、
大人にはわからないような秘密の言葉を作りたいなって思ったんです。
だから、本当に音だけで、意味は全くなくて。
”君が僕にくれたもの”っていう副題は、
この曲の意味を表しているんですけど、
何をもらったのかっていうのは、
ゲームを解いてからのお楽しみにしていただけたらと思います(笑)